バイオ茶の宮崎上水園

創業明治二十九年 バイオ茶の宮崎上水園

STORY 宮崎上水園のお茶づくり 「急がず、休まず、怠らず」

Vol.17

農業を学ぶ勉強会、「はじかき会」

上水園の農業勉強会、その名は「はじかき会」。
「恥をかかなくては、成長できない。いままでの農業を根本から見つめ直し、恥をかいてよりよい作物を作り出そう」。そんな思いから、名前が決まりました。

宮崎・都城市でバラ栽培をする矢野正美さんから「バイオ茶の話をお聞きしたい」と連絡をいただいたことがはじまりです。「夜ならいいですよ」とお返事すると、その夜、さっそくお見えになりました。まずお話したのは、自分が取り組む栽培方法と通常の栽培方法との違いです。農薬の散布、ハウスの温度管理などによってコントロールされている場合が多いですが、上水園では自然界の温度・湿度を中心に栽培を考えていると話しました。

春に芽生え、花が咲くと、夏に実がなり、大きく成長して、秋にその実が熟す。四季が巡る中で、それは自然に起こること。季節の条件を把握しながら、必要なときには手を加えますが、上水園ではほとんど自然まかせです。「自然の条件が整ったとき、バラも美しく咲くのではないですか?」。そう問いかけると、「日常はそんなことは考えず、肥料や温度管理で手一杯です」と、矢野さんは言われました。

農業はすべて、炭水化物の生産業。大気中にある炭素と、土中から吸い上げられた水の中の水素をいかにくっつけるか。その条件をいかに作り上げていくか。環境づくりこそ、私たちの仕事です。同じ土壌で同じように管理していても豊作不作があるのは気象条件にある……。そんな基礎的なお話をしたところ、自分だけが聞くのはもったいないと友人を連れてこられました。そうしてだんだんと農家の輪が広がり、寺子屋のようになりました。

花、野菜、果物、米づくり……、いろんな農家が、それこそ全国から「はじかき会」に集まります。「来る者拒まず、去る者追わず」。本人の自由にまかせた、自主的な勉強の場。コロナ禍まで毎月開催してきました。作物は違っても、遺伝子の違いだけで、基本はほとんど同じ。人も、植物も、作物も、みんな自然界のバイオリズムの中で生きています。

好きな言葉に「無心・無欲・無想」があります。
既成概念にとらわれず、なぜそうなのか。疑問を持って見るうちに、少しずつ解明されていくものです。どうして新芽は生まれてくるのか。茶葉は蒸すことでどう変化するのか。探っていくうちに少しずつ、その過程の中で「必要なもの」と「そうでないもの」がわかるようになりました。それまでは、栽培も加工も深く考えることなく、通常の栽培法のままに農薬を散布していたのです。けれど、そんなことをしなくとも、山の木々も、土手の草花も、自然に変化します。自然こそが、私たちの師匠であり、教材なのです。



上水園の農業勉強会「はじかき会」は自宅にて開催。宮崎のみならず、参加者は四国や関西、関東など、全国各地から
上水園の農業勉強会「はじかき会」は自宅にて開催。宮崎のみならず、参加者は四国や関西、関東など、全国各地から
「はじかき会」メンバー育てるスイトピーはしゃんとたくましく美しい
「はじかき会」メンバーが育てるスイトピーはしゃんとたくましく美しい
「はじかき会」メンバーが栽培するマンゴー。思うように育たなかったが、「はじかき会」を通して栽培方法を一から見直し、美味しいマンゴーに
「はじかき会」メンバーが栽培するマンゴー。思うように育たなかったが、「はじかき会」を通して栽培方法を一から見直し、美味しいマンゴーに